接骨院に来院する患者さんから
「わたしは骨盤がずれてるから」
「ぼくは骨盤が歪んでるから」という言葉を非常によく耳にします。
まあ世の中に「骨盤矯正」という言葉があふれているからこういう思い込みをされる患者さんが多いのもうなずけます。
思い込み?
そういうとたいていの患者さんは
怪訝な顔で
「整体で骨盤がずれているといわれました」
「カイロでゆがんでいるから脚の長さが違うといわれたんですけど」
と答えられます。
OK
OK
まずは「骨盤矯正」という言葉から紐といていきましょう。
「骨盤」というのは大腿骨と脊柱の間で体を支える、強固に1体化した一群の骨の解剖学的名称です。
左右の寛骨、仙骨、尾骨で構成されており寛骨は腸骨、座骨、恥骨が結合してひとつの寛骨になっています。
「矯正」というのは欠点を直すこと。正常な状態に変え正すこと。
正しくない状態に対して力を加えて正しい状態にすること。歯科医院でおこなわれる歯列矯正がイメージしやすいですよね。
すなわち「骨盤矯正」というキーワードは骨盤の正しくない状態を正しい状態に直すこというになります。
しかしこのキーワードこそ解剖学をきちんと学んだ人間からすると非常に強い違和感を覚えます。
さきほど「骨盤」の言葉の説明でものべましたが成長にともない腸骨、座骨、恥骨は寛骨というひとつの骨になるのでこれらがずれるということはありません、骨折でもして転位(ズレ)があるものならおそなくとてつもない激痛で動けないでしょう。
寛骨と仙骨と尾骨はお互いにとても強固な靭帯(下画像白い部分)で結合しているので交通事故などの日常生活ではおこりえないような外力がおこらない限りズレ、ゆがみなどはおこらないといえます。
出産などでおこる恥骨結合離開などもズレというならこれも激痛で歩行が困難な症状がでるほどです。
「骨盤矯正」と骨盤の構造がわかったところで、「骨盤のゆがみ、ズレ」について考えていこうと思います。
多くの方がこんな風に骨盤がなる状態をイメージしているのではないでしょう?
左のイラストがズレている?ゆがんでいる?骨盤のイメージです。
右のイラストが正常な状態なのですが、それと見比べると左のイラストの骨盤は骨がかなり変形していますね。
しかし実際に骨盤の左右差や脚長差がある状態というのおそらく下のイラストのような状態だと思われます。
左から横から見た時に正常、前に傾いている、後に傾いている。
後ろから見た時に正常、左右に傾いている。
という状態のイメージのイラストです。
こちらの右端のイラストの骨盤は歪んでいません。
右から2番目の図と比べると左に傾いているだけです。
これを一般的には「骨盤のずれ、ゆがみ」と呼んでいるのと思われます。
ゆがんでいるというよりはバランスが崩れていると表現するほうが適切なように感じますね。
なぜこのような骨盤の傾きが起こってしまうのでしょうか?
それは、骨盤周囲にある筋肉による影響が大きいと考えられます。
骨盤は身体の中心にある部分なので、たくさんの筋肉がくっついています。
それが、日常生活の座り方や歩き方の癖や仕事やスポーツによる過度な使いすぎによって、
バランスを崩してしまうとことが原因として考えられます。
まあそもそも解剖図のようなきれいに左右均等な骨格の人の方が絶対的に少ないと思います。
人間には利き手、利き足がありますしそれによって左右の筋肉の発達や骨の形もちがうので左右非対象というのがそもそも普通なのです。
まとめると
・骨盤は解剖学的にまずズレない歪まない
・脚の長さや左右の骨盤の高さがちがうのは骨盤ではなく筋肉が原因 ※脚長差は膝関節や股関節に原因があることもあり
・左右非対象は生理学的許容範囲内であればまったく問題なし
・筋肉の左右アンバランスはストレッチ、トレーニング、筋膜リリーズなどで改善可能
長文ですが「骨盤矯正」信者が一人でも減ることをイチ施術者として切に願います。